自営業を廃業したらその後どうなる?手続きや生活の選択肢を解説
事業を終了する際には、廃業届の提出や税金の申告といった一連の手続きを行う必要があります。これらの手続きを怠ると、事業が継続していると見なされ、不要な税金が課される可能性があります。
正しい手順を踏むことで、余計な費用や手間をかけずに安心して廃業を進められます。
本記事では、自営業を廃業する際に必要な手続きや書類の種類、提出方法などを詳しく解説します。
自営業者が廃業する際の流れ
自営業を廃業する際には、まず廃業日を明確に設定します。次に、従業員や取引先などの関係者に早めに廃業の予定を伝えることが大切です。その後、税務署に廃業届を提出し、関連書類を整えて必要な手続きを進めます。
もし借入金などの債務がある場合は、速やかに返済を始めるようにしましょう。
最後に、廃業した年の所得に関する確定申告を忘れずに行いましょう。一つひとつの手続きを丁寧に進めることで、廃業後も落ち着いて新しい生活をスタートできます。
休業時の廃業届の提出は不要
業を完全に終了するのではなく、一時的に休業する場合には、廃業届を提出する必要はありません。
ただし、青色申告を続ける予定がある場合、休業中であっても確定申告は必要です。申告書には「休業中」と記載すれば、所得がゼロでも問題なく受理されます。
自営業の廃業時に提出する書類
ここでは、自営業を廃業する際に提出が求められる主な書類と、それぞれの提出先・期限・提出方法を紹介します。
1:個人事業の開業・廃業等届出書
個人事業の開業・廃業等届出書に関する基本情報は、下表のとおりです。
提出先 | 所轄税務署 |
提出期限 | 廃業後1か月以内 |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・e-Tax(電子申告) |
届出をしないままでいると、税務署は事業を「継続中」と判断し、確定申告の案内が引き続き送付される可能性があります。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
2:青色申告の取りやめ届出書
青色申告をしていた場合は、下表の書類も必要です。
提出先 | 所轄税務署 |
提出期限 | 青色申告をやめる年の翌年3月15日まで |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・e-Tax |
廃業にともなって制度を終了する際には、廃業届と一緒に必要な書類を提出する必要があります。
出典:国税庁「A1-10 所得税の青色申告の取りやめ手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200008.htm
3:事業廃止届出書
事業廃止届出書に関する基本情報は、下表のとおりです。
提出先 | 所轄税務署 |
提出期限 | 廃業後1か月以内 |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・e-Tax |
提出期限は明確に定められていませんが、廃業届とあわせて、できるだけ早めに提出しましょう。
また、インボイス発行事業者の登録取消しは「適格請求書発行事業者の登録取消しを求める旨の届出書」の別途提出は必要ありません。
出典:国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_06.htm
4:所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書の基本情報を見ていきましょう。
提出先 | 所轄税務署 |
提出期限 | 第1期分および第2期分:その年の7月1日から7月15日まで 第2期分のみ:その年の11月1日から11月15日まで |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・e-Tax |
予定納税している場合、廃業後に収入が見込めなくなるため、納税額の見直しを申請できます。
出典:国税庁「A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/02.htm
5:給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
下表は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書に関する基本情報です。
提出先 | 所轄税務署 |
提出期限 | 廃業後1か月以内 |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・e-Tax |
従業員に給与を支払っている個人事業主は、事務所の廃止に伴い「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出が必要です。
出典:国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm
6:個人事業税の事業廃止に関する届出書
個人事業税の事業廃止に関する届出書の基本情報は、下表のとおりです。
提出先 | 管轄の県税事務所 |
提出期限 | 都道府県によって異なる |
提出方法 | ・持参 ・電子申請 |
廃業届の正式名称や様式、提出期限は地域によって異なります。たとえば、東京都では事業廃止日から10日以内の提出が求められる一方、愛知県では1か月以内となっています。
正確な詳細は、事業所所在地の都道府県税務担当窓口に確認しましょう。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
7:健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届と被保険者資格喪失届
下表は、健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届と被保険者資格喪失届に関する基本情報です。
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出期限 | 廃業後5日以内 |
提出方法 | ・持参 ・郵送 ・電子申請 |
事業所の廃止等により社会保険の適用事業所に該当しなくなった場合は、事業所を管轄する事務センターまたは管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届」を提出します。
このときに「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」もあわせて提出します。
出典:日本年金機構「1-6:適用事業所が廃止、休止等により適用事業所に該当しなくなったとき」
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20120314-01.html
8:雇用保険適用事業所廃止届と雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険適用事業所廃止届と雇用保険被保険者資格喪失届における基本情報は、下表のとおりです。
提出先 | 管轄のハローワーク |
提出期限 | 10日以内 |
提出方法 | 持参 |
雇用保険被保険者資格喪失届を提出していない場合、雇用保険適用事業所廃止届は受理されません。両方の届出は、あわせて提出する必要があります。
出典:ハローワーク「雇用保険適用事業所廃止届」
https://hoken.hellowork.mhlw.go.jp/assist/001000.do?screenId=001000&action=koyohotekiHaishiLink
出典:ハローワーク「雇用保険被保険者資格喪失届」
https://hoken.hellowork.mhlw.go.jp/assist/001000.do?screenId=001000&action=koyohohiSoshitsuLink
廃業にかかる費用
自営業の場合、法人のような登記手続きが不要なため、廃業にともなう行政手続き自体に費用はかかりません。とくに、自宅を仕事場としていた小規模な事業であれば、金銭的な負担はほとんど発生しないと考えられます。
一方で、事務所や店舗を借りていた場合や、大型の設備・資産を保有していた場合は、次のような費用が発生する可能性があります。
- 不要となった在庫や備品の処分費用
- 借用していた物件の原状回復工事費
- 税理士をはじめとする専門家への相談料や手続き代行費用 など
事業の内容や保有資産の状況によって、廃業にともなうコストは大きく異なります。
廃業時に発生した費用は経費に計上できる
廃業後に支払った費用であっても、事業に関係するものであれば経費として扱えます。
たとえば、在庫の処分費や原状回復工事、専門家への報酬、事務所の光熱費などは「事業を廃止した場合の必要経費の特例」により、事業所得の経費として計上が認められます。
出典:国税庁「法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》関係」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/13/01.htm
廃業後の確定申告も忘れずに
廃業した年の合計所得が基礎控除額を超える場合は、所得税の確定申告が必要です。申告を怠ると、延滞税や無申告加算税が発生するおそれがあります。
減価償却中の資産はどう扱う?
廃業年の減価償却費は、廃業日までの月数に応じて計算します。
資産を廃棄した場合は、除却損として損失処理が可能です。売却した場合は、未償却残高をもとに譲渡所得を算出します。保有したまま個人使用に切り替えるだけであれば、特別な申告処理は不要です。
廃業時に赤字でも確定申告をするメリット
確定申告の義務がなくても、申告することで以下のようなメリットがあります。
所得税の還付を受けられる可能性
廃業前に所得税を納めていた場合、申告により還付される場合があります。
非課税証明書を取得できる
確定申告を済ませておくと、市区町村から非課税証明書が発行されます。各種公的支援の申請や手続きの際に役立ちます。
国民健康保険料の軽減措置を受けられる
申告内容に基づき所得が低いと認定されると、国民健康保険料の減額や免除を受けられる可能性があります。
自営業者は廃業後にどう生活する?
廃業後の生活設計として「再就職する」か「家族の扶養に入る」かを早めに決めましょう。どちらを選んでも、それぞれに必要な手続きがあるため、事前の準備が大切です。
再就職する
健康状態に問題がなく、働く意欲があれば、これまでの経験を活かして再就職を目指すことができます。安定した収入を得ることで、生活面だけでなく精神的な安心も得られます。
ただし、再就職をしても、廃業した年の確定申告は必要です。再就職先では年末調整が行われるため、確定申告との重複や漏れがないように注意しましょう。
また、就職先では健康保険や厚生年金に加入することになります。これらの手続きは会社側が行うため、人事・労務担当者の指示に従って手続きを進めましょう。
家族の扶養に入る
収入が一定の基準を下回る場合、家族の扶養に入る選択肢もあります。扶養に入るには、扶養者となる家族の勤務先で以下の条件を確認し、所定の手続きを済ませる必要があります。
- 健康保険の扶養条件
- 国民年金の第3号被保険者として認定されるか
- 税務上の扶養控除が適用されるか
扶養手続きが完了すると、保険料や年金、税負担が軽減され、廃業後の生活設計がしやすくなります。
まとめ
自営業が廃業する際の手続きは、法人に比べて比較的簡単です。しかし、廃業した年の所得に関しては確定申告が必要となるため、税務処理を確実に行うことが大切です。
また、取引先との関係が残っている場合は、未払い金や売掛金などの債権・債務を廃業前に整理する必要があります。将来的なトラブルを避けるためにも、計画的に進めましょう。
ワコーファイナンスは、地域密着型の金融会社として、不動産担保ローンを提供しています。事業資金はもちろん、廃業後の生活資金にも柔軟に対応しており、最短2日で利用可能なスピード審査に対応しています。
電話だけでなく、オンラインからの申し込みや相談も受け付けています。突然資金が必要になった、または廃業後の資金に不安がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ワコーファイナンスでは、資金使途自由の不動産担保ローンをご検討中の方に向けて
お試し診断を承っております。
本記事は正確な情報を掲載するよう努めておりますが、
情報が古くなったりすることもあり、必ずしもその内容の正確性を保証するものではございません。
当該情報に基づいて被った損害については責任を負いかねます。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆